無機質になりつつある時代に映えるミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』

 
©SOUL SAPIENS Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

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ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)が2018年8月29日(水曜日)に東京・東急シアターオーブで開幕した。

 

開幕に先駆け、マスコミ・報道関係者向けにドレスリハーサル(ゲネプロ)が開催され、主人公Phantom(ファントム/怪人)にイギリス(連合王国)のウエストエンドとアメリカ合衆国のブロードウェイが誇るミュージカル界屈指の実力派スター、俳優/シンガーのJohn Owen-Jones(ジョン・オーウェン=ジョーンズ)を迎えたミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)がお披露目された。

John Owen-Jones(ジョン・オーウェン=ジョーンズ)は、一般的に有名な作曲歌のAndrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド・ウェバー)が手掛けたミュージカル『The Phantom of the Opera』(邦題:オペラ座の怪人)で主人公Phantom(ファントム/怪人)を演じ、いままで約2,000公演に出演。そのJohn Owen-Jones(ジョン・オーウェン=ジョーンズ)が、この日本国で、Andrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド・ウェバー)とそのヴァージョンに大きな影響を与えた劇作家/演出家のKen Hill(故・ケン・ヒル)が手掛けたミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)で主人公Phantom(ファントム/怪人)を演じる。

劇場に入ると、客席の頭上にはフランス共和国パリにあるオペラ座(ガルニエ宮)を彷彿とさせ、ミュージカル『オペラ座の怪人』の象徴とも言えるシャンデリアが出迎える。ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)は、日本国のミュージカルにはなかなかない、オーケストラによって楽曲が生演奏される。ステージと客席の間にはオーケストラピットが設けられており、開演直前まで楽器のチューニングが行われ、本物のミュージカルを味わえるワクワク感に包まれる。

物語が進み、客席の出入口からオペラ座の新しい支配人となったRichard(リシャード)たちが登場し、観客に絡みながら客席や通路などをチェック。この演出によって、観客の誰もが自分がパリのオペラ座にいると、自然と物語の中に入り込み、観客を巻き込みながら劇場全体で物語が繰り広げられる。

物語は、ミステリー、サスペンス、ラブロマンスの中でオペラ座に住むと噂される幽霊の正体を探し、謎解きが進んでいく。1909年に小説家のGaston Leroux(故・ガストン・ルルー)が発表し、その後、小説化された『Le Fantôme de l’Opéra』(オペラ座の怪人)に忠実で、切なく悲しい物語がより強調されながらもユーモアがあり、展開もシンプルでわかりやすい。時にディープなシーンであってもユーモアで包み込み、笑いさえ生んでしまう。

ミュージカル『オペラ座の怪人』を色で表現するならば、すでに様々なヴィジュアルにある通り、オペラ座の緞帳と血なまぐさい“赤”、Phantom(ファントム/怪人)の仮面の“白”、Phantom(ファントム/怪人)の二面性と物語の哀しみの“黒”。しかし、Ken Hill(故・ケン・ヒル)が手掛けたミュージカル『Phantom of the Opera』(邦題:オペラ座の怪人)/ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)は、Andrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド・ウェバー)が手掛けたミュージカル『The Phantom of the Opera』(邦題:オペラ座の怪人)の構成や恋物語中心の少し華やかなメージとは異なり、全体的に暗く“黒”が濃いイメージと言え、暗い中にも登場人物たちの人間味溢れるユーモラスな側面を丁寧にコミカルに描写することで悲劇と喜劇が融合しつつも、そのギャップが“愛するが故の悲劇”のテーマと切なさをより深く感じさせる、Ken Hill(故・ケン・ヒル)ならではの構造になっているのだ。

劇中で使用される楽曲は、オペラのアリアやクラシックのメロディが採用されており、ストーリーに合わせてKen Hill(故・ケン・ヒル)が作詞し、歌詞を加えている。実際のオペラで歌われるシーンとミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)のストーリーともシンクロし、登場人物や物語を引き立たせ、すんなりと心地よく耳に入ってくる。何と言っても物語にのめり込ませてくれるJohn Owen-Jones(ジョン・オーウェン=ジョーンズ)の圧倒的な歌唱が素晴らしすぎる。Phantom(ファントム/怪人)が登場するシーンで歌う『While Floating High Above』(高い高いところから)は、美しい高音で魅了、誰もが心を奪われる。Christine(クリスティーン)がオペラ座の楽屋裏から聞こえる“天使の声”で歌唱力をつけた、まさしくその“天使の声”と言える。『To Pain My Heart Selfishly Dooms Me』(制御できない運命)では、John Owen-Jones(ジョン・オーウェン=ジョーンズ)、Christine(クリスティーン)を演じる女優/シンガーのHelen Power(ヘレン・パワー)、Raoul(ラウル)を演じる俳優/シンガーのCameron Barkley(キャメロン・バークレイ)が、オペラ全開、見事な三重唱で一幕の最後を締める。Helen Power(ヘレン・パワー)の透き通った美しいソプラノも素晴らしく、聴き応えがある。

新聞記者でもあったGaston Leroux(故・ガストン・ルルー)は、実際のオペラ座(ガルニエ宮)の構造、地下、建築経過、建設当時の怪談や事件なども取材し、それを引用して『Le Fantôme de l’Opéra』(オペラ座の怪人)を虚構と現実が入り交じったミステリアスな物語に仕上げた。幽霊と思われていたオペラ座の地下に巣食うPhantom(ファントム/怪人)は、都市伝説にも似たフィクションの主人公ではあるが、幽霊でも怪人でもなく、顔が異なるだけで、人を愛し憎む、恋もする、嫉妬もする、一人の男。外の世界とは距離を置き、孤独で異形のものとして生きざるを得なかった一人の男の哀しくも儚い人生の物語は、無機質な時代になりつつあり、他者やよそ者、異種を恐れ、排除し、不寛容な空気が蔓延する現代に生きる人々に気付きを与える・・・いつの時代も“怪人”など存在せず、人間が無責任かつ無残にも“怪人”をつくり出し、悲劇を生んで、繰り返しているということを。ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)は、人間味溢れ、人間臭い物語が、いまの時代に映え、メッセージをよりシンプルに伝えてくれる。

演劇ファン、ミュージカル・ファン、オペラ・ファンはもちろん、ミュージカルを初めて観る人、そして、若い世代にこそ、ミュージカルの原点と言っても過言ではない、この究極の名作・クラシックミュージカル、John Owen-Jones(ジョン・オーウェン=ジョーンズ)がPhantom(ファントム/怪人)を演じるミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)から観ることをおススメしたく、貴重な機会を逃してほしくない。

ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』(The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill)は、2018年9月9日(日曜日)まで東京・東急シアターオーブで上演。

フォトギャラリー

レポート・文: Ryohei Ryan Ebuchi、Kentaro Tobe

 

公演情報
The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill
ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』

「ここには幽霊が住んでいる―」パリ・オペラ座の舞台裏では、こんな噂が囁かれていた。関係者たちは幽霊にまつわる慣習を守るようにと新任の支配人リシャードを諭すが、彼はまったく取り合わない。その夜、無名のコーラスガール、クリスティーンが歌姫カルロッタの代役を務めたオペラ『ファウスト』の公演で、出演者が不意の死を遂げる。遺体のそばには、幽霊からの謎のメモが添えられていた。一方、恋人クリスティーンの楽屋を訪れたリシャードの息子ラウルは、部屋の中から彼女と男の声を聞き、嫉妬に駆られる。クリスティーンは<謎の男>との不思議な体験を打ち明け、ラウルへの愛を誓うが、物陰に身を潜めてその様子を伺う人物がいた・・・。

  • 日程: 2018年8月29日(水曜日)から9月9日(日曜日)
  • 時間: 日により異なる ※公式ウェブサイトをご参照ください。
  • 会場: 東京・東急シアターオーブ(東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ 11階)
  • 料金: 全席指定 S席 11,800円(税込) / A席 8,800円(税込) / B席 6,800円(税込)
  • チケット: キョードー東京、テレビ東京オンラインチケット。チケットぴあ、イープラス、Bunkamuraチケットセンター、東急シアターオーブチケットカウンター、CNプレイガイド、楽天チケット、セブンチケットで絶賛発売中。
  • 原作: Le Fantôme de l’Opéra by Gaston Leroux(小説『オペラ座の怪人』 by ガストン・ルルー)
  • オリジナル演出・脚本・作詞: Ken Hill(ケン・ヒル)
  • 出演: John Owen-Jones(ジョン・オーウェン=ジョーンズ)、Helen Power(ヘレン・パワー)、Cameron Barclay(キャメロン・バークレイ)、Jazzy Axton(ジャジー・アクストン)、Nigel Godfrey(ナイジェル・ゴッドフライ)、Helen Moulder(ヘレン・モールダー)、ほか
  • 上演: 2時間30分予定(休憩20分含む)、生演奏・英語上演・日本語字幕あり、一部の公演終演後にはJohn Owen-Jones(ジョン・オーウェン=ジョーンズ)が本編以外の作品から楽曲を披露するスペシャル・アンコールがあります(10分~15分を予定)。
  • 主催: キョードー東京、テレビ東京、読売新聞社
  • 招聘: キョードー東京
  • 企画制作: キョードー東京
  • 注意: チケットを紛失された場合、または、当日チケットをお忘れになった場合のご入場はお断り致します。いかなる理由でもチケットの再発行は行っておりません。
  • 備考: 未就学児入場不可。
  • お問い合わせ: キョードー東京 0570-550-799(平日11時00分から18時00分/土曜日・日曜日・祝祭日10時00分から18時00分)

The Original Stage Musical Phantom of the Opera by Ken Hill
ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』
http://operaza2018.jp/

 

©ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』

 

 
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