特別展『恐竜博2019』が開幕—世界初公開のデイノケイルスとむかわ竜の全身復元骨格&日本国初公開の化石標本も展示

左)2009年夏、北海道勇払郡むかわ町中部にあるパンケルサノ沢から動物化石を含むノジュールが転石として発見され、2年をかけて蟻酸処理が施されると、中に閉じ込められていた骨の化石が徐々に姿を現す。2010年春頃には、その骨の化石が、モササウルス類の頭骨の化石だということが明らかになったが、同年の暮れにはこのモササウルス類の同定が属・種より更に上のクレードで変更することになり、世界でも珍しいハリサウルス類の骨の化石だということがわかった。さらに海の爬虫類では初めて夜行性が示唆されている。日本国で初めての発見となっただけではなく、西は中東から東はアメリカ合衆国カリフォルニア州までの広域で未確認だったこの稀少グループの分布を一気に広げる画期的な発見となった。また、頭部約8割と頸椎がほとんど変形を受けず保存されていたため、個々の骨の化石のレプリカ制作後にはモササウルス類標本として世界でも異例の「レプリカを使った」頭部の立体復元が試みられた。
モササウルス類

モササウルス類 全身骨格産状(複製)/和歌山県立自然博物館 ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
「むかわ竜」が存在していた頃の海の食物連鎖の頂点に君臨していたとされるモササウルス類の化石の中で、最も完全度の高い、和歌山県で発見された全身骨格の化石が公開され、日本国の恐竜と恐竜研究史上最大の発見も紹介されている。これまで日本国で発見された約40点の海生爬虫類モササウルス類の標本はいずれも部分的なもので、まとまった発見例はなかった。しかし、今回展示されているモササウルス類の化石(標本)は、和歌山県鳥屋城山で全身骨格の8割程度が発掘され、標本数の少ない日本国でも貴重な化石(標本)である。全身骨格の発掘とクリーニングの作業には、5年もの歳月と労力が費やされている。フォスフォロサウルスやこのモササウルス類の繁栄した白亜紀末期の海において、モササウルス類では獲物種を多様化させるための顎や歯の進化のみならず、どのように泳いで獲物を仕留めるかにも関連するヒレや胴体の進化も並行して起こっていたことを検証させる、世界でも画期的な発見である。
「むかわ竜」が生きた恐竜世界

「むかわ竜」が生きた恐竜世界のCG ©︎ NHK
4Kスーパーハイビジョンシアターでは、日本国各地で発見された恐竜や海の巨大爬虫類を最新の研究成果をもとに高精細CGで再現した映像「「むかわ竜」が生きた恐竜世界」が公開されている。リアルな映像によって「むかわ竜」やモササウルス類が生きた太古の大陸(日本国)の恐竜世界を知ることができる。
絶滅の境界を歩いて渡る