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TODAY'S HUMAN ≫ 堤大介(アニメーション監督)——好奇心を持ち、自分が知らないことに1人の人間として興味を持とう

ヒトにフォーカスし、ヒトの“いま”を伝え、ひとと人の間・思いを繋ぐグラフプロジェクトです。路上などで撮影した人物のストリートポートレートやインタビューをご紹介します。

 
Daisuke "Dice" Tsutsumi|堤 大介
アニメーション監督の堤大介さん ©2023 Tonko House Inc. ©︎ 2023 TODAY'S HUMAN and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

 

TODAY’S HUMAN Vol.1

今年2023年からグラフプロジェクト TODAY’S HUMANをスタートします。スタートに相応しく、今回は、昨年2022年10月よりNetflixにて世界配信されている長編アニメーション『ONI: Thunder God’s Tale』(邦題『ONI ~ 神々山のおなり』)の監督を務めたアニメーション監督のDaisuke “Dice” Tsutsumi(堤大介)さんにフォーカスします。今年1月より東京・立川 PLAY! MUSEUMで開催されているトンコハウス・堤大介の「ONI展」オープニングに合わせてアメリカ合衆国から来日したため、撮影とインタビューをさせていただきました。

 

 

——現代は、多様性や包括性、公平性が叫ばれる一方で、他者やよそ者、自分とは異なった人、自分が知らない文化・価値観・物事を恐れ、悪・敵と決めつけ、差別・区別し、銃・暴力・インターネット・公権力(警察)などを利用した攻撃など、排他的・不寛容な空気が蔓延しています。トンコハウスの最新作・長編アニメーション『ONI ~ 神々山のおなり』は、まさにそんな現代社会へのメッセージが込められていると感じました。人の心の中にある排他的・不寛容な気持ち、あるいは、世の中にある排他的・不寛容な空気をなくすために、堤監督はいま何が必要だと思いますか?

自分の中に潜む“鬼”、“闇”を認識する——

長編アニメーション『ONI ~ 神々山のおなり』では、まず自分の中に潜む“鬼”、“闇”を認識するということを描いています。わからないものを怖がるという気持ちは、絶対に人間誰にでもあって、それがエスカレートして差別したり、排他的になったりするというのが、その人が悪い人だからというふうに考えてしまうと、“自分は良い人だから絶対にそれはない”と勘違いしてしまい、いつの間にかそういうことをしている自分に気づきもしないというのが、ほとんどのケースだと思うんです。いま世の中に存在している排他的な流れとか、そういう闇は、見える人には見えるんですけど、見えない人にはおそらく自分がそうしていることに気づいていないんですよね、ほとんどの人が。僕は、“これはみんなが自分たちも含めて全員が抱えているものですよ”ということを認識することが大事だと思います。アメリカは多民族国家なので、差別がよく浮き彫りになり、問題になります。みなさんがよく勘違いするのは、“アメリカ人は差別主義(者)が多い”と勝手に思ってしまっていると思うんですが、これは本当に間違いで、何人だから差別するというのはないんですね。差別というのは必ず存在していて、日本にももちろん存在しますし。差別をしてしまう気持ちはどこから来るのか——そうならないようにするにはどうすればいいのか——みんなで考えることを当たり前にすることが大事だと思います。そこに行くために、僕らがよく言うのは、“好奇心を持とう”ということです。自分が知らないこと、何でこの文化のこういう人たちはこういうことをやっているのだろう?と——例えば、イスラム教の人たちがこういう文化やこういうふうな生活習慣ですというように、まず1人の人間として興味を持てば、少しずつでもその人たちを理解しようという幅が広がるはずなんです。でも、それをしないで“自分はわからない”からといって興味を持たなければ、だんだん“闇”に覆われて差別とか排他とかに繋がるんだと思います。

 



NAME|名前
Daisuke “Dice” Tsutsumi
堤 大介(つつみ だいすけ)
 
BIRTH PLACE|出身
Tokyo, Japan(Living in the United States)
日本国・東京都(アメリカ合衆国在住)
 
WORK|職業
Animation Director
アニメーション監督
 
DREAM|夢
今回『ONI』を制作して、自分の中での発見とか、今度こんなお話を作ってみたいとか、そういうものが増えてきたので、とにかく止まらず作り続けたいです。それから、作らせてもらうというか、作ることって本当に幸運だと思うんですね——僕ら作り手は。やっぱり、そのためにも止まらず作り続ける、できるだけ面白いものを、いいものを作り続ける。そうすることで、またさらに次のものを作っていけるっていうことを考えると、まずそれが大事で。夢は、たくさんあるんですけど——1つの夢は、『ダム・キーパー』という作品の長編を作れるように——そこに行くまでの道のりはまだ長いかもしれませんが、自分たちの中ではすごく思いの強い作品なので、もしかしたら違う作品などで力や腕を磨いて『ダム・キーパー』を作りたいなと——それが夢ですね!
 
MESSAGE|メッセージ
「ONI展」に来ていただければわかるんですけど、一見すごく可愛らしいキャラクターがわいわいしているように見えますが、物語はみなさんが考えているものとは違ったり——良い意味でみなさんの期待をちょっと裏切るところもあったりするんじゃないかなと思うので、ぜひ物語(作品)も見ていただけると、また違った形で「かっぱ」や「雷神」というキャラクターが見えてくるんじゃないかと思います。自分たちがこの作品に込めた想いというのは、「そもそも鬼って何だ?」っていう——是非、この作品や「ONI展」を見てくれる方たちにも「そもそも鬼って何だ?」と考えるきっかけになれば良いなと思います。
 
PROFILE|プロフィール
高校卒業後、単身渡米。アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市・School of Visual Arts(スクール・オブ・ビジュアル・アーツ)を卒業後、Lucas Learning(ルーカス・ラーニング)、Blue Sky Studios(ブルー・スカイ・スタジオ)などで2002年から公開の映画『Ice Age』(邦題『アイス・エイジ』)シリーズや2005年公開の映画『Robots』(邦題『ロボッツ』)などのコンセプトアートを担当。2007年にPixar Animation Studios(ピクサー・アニメーション・スタジオ)に招聘され、アートディレクターとして2010年公開の映画『Toy Story 3』(邦題『トイ・ストーリー3』)や2013年公開の映画『Monsters University』(邦題『モンスターズ・ユニバーシティ』)などを手がける。2014年7月にピクサー・アニメーション・スタジオを離れ、同スタジオで出会い盟友となったRobert Kondo(ロバート・コンドウ)と一緒にTonko House(トンコハウス)を共同設立。初監督作品『The Dam Keeper』(『ダム・キーパー』)は2015年アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネート。2021年には日本人として初めてジューン・フォレイ賞を受賞。1冊のスケッチブックに71人の著名なアーティストが1枚ずつ絵を描き、手渡しで世界中を巡るプロジェクト『SKETCHTRAVEL』(『スケッチトラベル』)の発案者でもあり、同プロジェクトはアニメ・漫画・イラスト・絵本それぞれの世界を代表する至極のクリエイターたちが世紀の競演を果たした。堤大介は、アメリカンドリームとも呼べるキャリアを歩み、新たな挑戦を続けている。
 
Tonko House|トンコハウス
http://www.tonkohouse.com
 
Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
Camera: Leica M10-R
 
取材協力: Tonko House、PLAY! MUSEUM、BlueSeep

 

©︎2023 Tonko House Inc. ©︎ 2023 TODAY’S HUMAN and Wingedicate

筆者が堤大介さんと初めてお会いしたのは、2016年に東京・クリエイションギャラリーG8開催された展覧会『トンコハウス展『ダム・キーパー』の旅』。会場に入ってすぐに堤大介さんとロバート・コンドウさんと目が合い、ご挨拶とお話を。展覧会に伺う前に短編アニメーション『The Dam Keeper』を拝見させていただき、ストーリーはもちろん、キャラクターやメッセージ性、温かみのあるものづくり・手づくり感も大好きに!堤大介さんとロバート・コンドウさんとお話をさせていただくと、めちゃくちゃ熱く、ホスピタリティ、優しさ、丁寧さ、親切さ、誠実さ、寛容さがあり、何よりもひととしての温かさに溢れていて、感銘を受け、大好きになった。このお二人のお人柄が作品に滲み出ていたことがわかる。それからお二人がどのような軌跡をたどり、思考を抱き、もの(作品)づくりをしているのかにも興味を持ち、追うようになった。昨年2022年には、待望の最新作・長編アニメーション『ONI: Thunder God's Tale』がNetflixにて世界配信、そして今年はPLAY! MUSEUMで「ONI展」の開催。日本人として誇らしく、今回の作品もストーリーやメッセージ性、ユニークでかわいいキャラクター、温かみのあるものづくり・手づくり感、日本国の自然・伝統・文化・習慣・空気感とその描写、光と闇、映像美・・・挙げればキリがないほど素晴らしい作品に仕上がっている。堤大介さんがアメリカ合衆国で“外国人”“よそ者”として生活してきた経験が元になったテーマやメッセージ性は、全世界はもちろん、日本国のいまの問題や風潮、矛盾を提起する。多くの方に『ONI: Thunder God's Tale』と「ONI展」を観ていただき、堤大介さんが言うように“光と闇”、“鬼(ONI)とは?”を自分自身の問題として、私たちみんなの問題として考えていただくことで、少しでも人の心・思考、世の中の風潮・空気が変わっていくことを願う。堤大介さんの夢である『ダム・キーパー』の長編映画化は、堤大介さんやロバート・コンドウさん、エリック・オーさん、トンコハウスさんを応援している私たちみんなの夢でもあるので、実現していただきたい!そして、劇場の大きなスクリーンで鑑賞したい!これからも、そしていつまでもリスペクトし続けます!ご協力いただいた堤大介さん、Tonko Houseさん、PLAY! MUSEUMさん、BlueSeepさん、N&Aさん、ありがとうございました!感謝

 
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