北海道の愛おしき動物と自然をとらえた写真集『カムイ』—半田菜摘“私にとって動物という存在は、畏敬の念を抱かせるカムイ”
北海道独自の生態系にフォーカスし、アイヌ=ヒトに自然の恵みを与えてくれるカムイ=神の姿をとらえた写真集が発売された!どのような写真集になっているの!?記事を読み進めよう!
日本国・北海道独自の生態系にフォーカスした写真集『カムイ』(日経ナショナル ジオグラッフィック)が2024年2月19日(月曜日)に発売された。
写真集『カムイ』は、国内外の写真コンテストでも高く評価されている気鋭の野生動物写真家 半田菜摘が、北海道独自の生態系にフォーカスし、アイヌ=ヒトに自然の恵みを与えてくれるカムイ=神の姿と、その生活をそっと覗きながらとらえた最新作。北海道の自然の中で生きる尊い神 カパッチリカムイ、オンネウ(オオワシ、オジロワシ)、山の神 キムンカムイ(ヒグマ)、沖にいる神 レプンカムイ(シャチ)、足の速い神 ケマコシネカムイ(キタキツネ)、子守の神 アッカムイ(エゾモモンガ)、よく知られているウパシ・チリ(シマエナガ)、そしてカムイからの恵みとしての獲物 ユク(エゾシカ)などを含む数多くのかわいい動物の姿と、彼らが暮らす自然環境と共に、かわいいだけではない動物の自然な姿をリアルに写し出した。自然界で起きるさまざまな厳しい現実の中で一生懸命に生かされ生きる動物のたくましさや謙虚にいのちを煌めかせる姿、雄大な自然の中にたたずむ神秘的な姿は美しく、読む・見る者を感動させる。
野生動物写真家であると同時に、現役の看護師として現在も病棟で勤務する著者 半田菜摘は、「どちら(の仕事)も生命と向き合う共通点を持っている」と言う。アイヌ民族の伝統や文化、北海道の生態系についても学び、北海道の動物や自然を撮影していくうちに「観察を重ねるたびに人間とは異なる能力やたくましさ、生命力からにじみ出る美しさを感取するのである。私にとって動物という存在は、畏敬の念を抱かせるまさしく『カムイ』であった」と本書で述べている。
日本列島北部周辺・北海道の先住民族であるアイヌ民族の伝統的な信仰では、森羅万象に魂が宿ると考えられ、動物や植物などヒトに自然の恵みを与えてくれるもの、火や水、服や食器などの生活用具としてヒトが生きていくために欠かせないもの、天候や災害などヒトの力の及ばないものなどをカムイ=神として敬い、大切にしてきた。その信仰や概念は、いまもなお継承されている。
カムイ
気鋭の動物写真家、半田菜摘の写真集。北海道の愛おしき自然と動物たち。可愛い動物たちの姿の向こうに、かわいいだけではない本当の姿を追う。
発行: 2024年2月19日(月曜日)
定価: 2,970円(税込)
著者: 半田菜摘
写真: 半田菜摘
目次: まえがき / ルウォプ(エゾシマリス) / ケマコシネカムイ(キタキツネ)/ カパッチリカムイ、オンネウ(オオワシ、オジロワシ) / ユク(エゾシカ) / トゥスニンケ(エゾリス) / クンネレクカムイ(エゾフクロウ) / クトロンカムイ(エゾナキウサギ) / ウパッチロンヌプ(エゾイタチ) / アッカムイ(エゾモモンガ) / コタンコロカムイ(シマフクロウ) / キムンカムイ(ヒグマ) / レプンカムイ(シャチ) / 北のカムイたち / 森の中で命を煌めかせる動物たち / 写真索引 / 参考文献 / 著者紹介
品番: 978-4-86313-606-9
仕様: 152ページ / ソフトカバー / 228mm x 228mm
発行: 日経ナショナル ジオグラフィック
取扱: Amazon、楽天ブックス、全国の書店、ほか
半田菜摘
https://www.natsumihanda.jp
日経ナショナル ジオグラフィック
https://nationalgeographic.jp
NATIONAL GEOGRAPHIC
https://www.nationalgeographic.com
写真集『カムイ』——写真集のタイトルだけでも読みたくなる、見たくなる本書。日本列島北部周辺・北海道の先住民族であるアイヌ民族の伝統的な信仰では、森羅万象に魂が宿ると考えられ、動物や植物などヒトに自然の恵みを与えてくれるもの、火や水、服や食器などの生活用具としてヒトが生きていくために欠かせないもの、天候や災害などヒトの力の及ばないものなどをカムイ=神として敬い、大切にしてきた。それは、ヤマト民族やインディアン(ネイティブアメリカン)、世界中の先住民族にも共通する自然信仰である。本書は、半田菜摘さんがアイヌ=ヒトに自然の恵みを与えてくれるカムイ=神の姿とその生活をそっと覗きながらとらえており、私たちが普段見ることのできない動物のかわいい姿だけではなく、厳しい自然環境の中で懸命に生かされ生きる姿をリアルに写し出している。見ていると、動物のかわいさはもちろんあるのだが、懸命さ、たくましさ、美しさ、愛おしさ、そして何よりも生かされ生きることへの感謝と素晴らしさを感じることができる。また、実際に北海道に行って動物や自然を感じたり、アイヌ民族の伝統や文化に触れたりもしたくなった。現代のひとは、自分で生きていると勘違いし、まわりに生かされていることを忘れてしまっている。地球や自然、環境に生かされ、まわりのひとにも生かされていることをしっかりと認識し、お互いに敬い、感謝の気持ちを忘れてはならない。自己中心的をはるかに越えて自分至上主義になっている現代人は、もう一度自然界からも学ぶ必要がある。こんな話をすると、弱肉強食という概念を持ち出してくる者がいるが、実は動物も自然も弱肉強食でなく、生態系や多様性のバランスの上に成り立っており、勝手に弱者と強者、敗者と勝者、成功者などと差別・区別化し、弱肉強食という概念でシステムと社会をつくっているのは人間だということを自覚し、改めた方がいいだろう。話が逸れてしまったが、本書はカムイの神秘的な姿、リアルな生活をとらえているだけあって、神々しい1冊。半田菜摘さんがとらえる野生動物と自然の写真をもっと見てみたい。日経ナショナル ジオグラフィックさんも素晴らしい仕事をしている。