愛され続けるキース・ヘリングを体感「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」—作品と向き合い、あなた自身が意味を考える
展覧会「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」が東京・森アーツセンターギャラリーで開催されている!どのような展覧会になっているの!?記事を読み進めよう!

最後となる個展のために制作した三角形の大作《無題》は、下書きをせずにリズミカルなラインで描かれていく作品とは異なり、かたちと色づかいを事前に慎重に構成した上で描かれている。本作は、キース・ヘリング独自のスタイルに、アンディ・ウォーホルのカモフラージュの作品を引用したり、1960年代にアーティストのフランク・ステラらが用いた四角形ではないキャンバス“シェイプト・キャンバス”を取り入れたりするなど、美術史を研究し、表現に取り入れてきたキース・ヘリングの集大成とも言える作品となった。

《イコンズ》 1990年/シルクルクリーンにエンボス加工、紙/中村キース・ヘリング美術館蔵 Keith Haring Artwork ©︎ Keith Haring Foundation ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
版画のシリーズ《イコンズ》にも登場する光り輝く赤ん坊(通称 ラディアント・ベイビー)は、キース・ヘリングのトレード・マークとして最もポピュラーなモチーフ。キース・ヘリングは、赤ん坊が人間の完璧な姿であり、社会の色に染まらず、純粋無垢で、未来への希望の象徴であると考えていた。ストリートでマーカーやチョークを使って絵を描き始めてから、死の寸前まで描かれたベイビーは、いまでも未来を象徴している。画面いっぱいの三つ目で笑う顔は、ヘリングの描いた不可思議なキャラクターの1つ。ミッキーマウスの目に着想を得ているといわれたり、三つの目は貪欲性を意味するといわれたり、または未知のエネルギーの象徴ともいわれ、キース・ヘリング自身は意味を公表していないためさまざまな想像力をかきたてられる。
スペシャル・トピック Keith Haring and Japan

《無題》 1983年/シルクスクリーン、紙/中村キース・ヘリング美術館蔵 Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

《無題》 1983年/シルクスクリーン、紙/中村キース・ヘリング美術館蔵 Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
東京ってところはほんとにすごい。まるで遊園地のようだ——キース・ヘリング(1987年5月9日)
日本国に対して特別な想いを抱いていたキース・ヘリングが初めて来日したのは、いまから40余年前の1983年。東洋思想や書を代表する文化は、キース・ヘリングに大きな影響を与え、来日の際は扇子や掛け軸など日本国特有の道具に墨を用いたドローイングを制作。また、当時バブルに沸いていた東京は、キース・ヘリングにとって未来都市と伝統が融合されたエキゾチックな街だった。1987年に再来日し、東京都多摩市のパルテノン多摩で約500人の子どもたちと共同制作、1988年にはキース・ヘリングがデザインしたグッズを販売するポップショップ東京を青山にオープンし、大きな話題を呼んだ。ポップショップは、Tシャツや缶バッジ、ポスター、マグネット、おもちゃなどが販売され、誰もがアートにアクセスできる新しいネットワークを構築し、ポップショップ東京では日本文化を融合させたアイテムが多数生まれた。本展では、当時販売された茶碗や扇子など代表的なものを紹介している。また、同年には多忙なスケジュールの中、原爆(核)の被爆地である広島を訪問。広島サンプラザホールで行われたコンサート「平和がいいに決まってる!!」のポスターも制作した。

《無題》 1983年/墨・和紙、墨・色紙/中村キース・ヘリング美術館蔵 Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

ポップショップ東京の案内状と、ポップショップ東京で販売された扇子 1988年/中村キース・ヘリング美術館蔵 Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
キース・ヘリングは、来日した際に和紙(掛け軸)や色紙に墨で描き、カタカナで自身の名前も残している。扇子は、ポップショップ東京のため、京都の老舗の京扇子専門店に依頼して制作。5人が腕を絡ませている躍動的なイメージが黒のラインだけで描かれており、扇子を開閉すると人物が動き、踊っているように見える。キース・ヘリングは、扇子があおぐだけではなく、儀礼や芸能で用いられることも理解した上で、伝統工芸品の独特な美を自分のアートと融合させた。
展覧会「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」は、Keith Haringの作品約150点が集結。Keith Haringの活動初期を語る上で欠かせない重要な作品であるSubway Drawingも日本国初公開を含む保存状態の良い7点が公開されている。Keith Haringは自身を開放・解放し、アートを日常に拡散させたことで、作品を見る者が新たな解釈や意味を考え作品に与える——作品を通してKeith Haringと見る者、そして見る者同士がコミュニケーションを取る=影響を与え合う。彼が目指したヴィジュアルコミュニケーションを本展でも体感することができる。彼の開放・解放、開放感・解放感のある作品は、あなたに安心感や共感も与えるだろう。本展のスペシャルコンテンツとして、「ヘリングの時代」をテーマに藤原ヒロシ氏によるスペシャルプレイリストがSpotifiで公開されている。Keith Haring氏がジャケットを手がけたDavid Bowie氏のシングル「Without You」やPeech Boysのシングル「Life is Something Special - Special Edition」、さらにはKeith Haringが体にペインティングをしたGrace Jones女史の「I’m Not Perfect (But I’m Perfect For You」なども!本展と併せてチェックを!本展の内覧会に出席したSAPIENS TODAY|サピエンストゥデイ公式アンバサダーの安西凌河さん(学生)は、本展について「1970年代、1980年代って良いですよね!そんな時代に活躍したキース・ヘリングの世界観とメッセージに深く触れることのできる展覧会でした!サブウェイ・ドローイングをまとめて見ることができるのもとても貴重です。キース・ヘリングの描写も展覧会の展示の方法もユニークで、普段アートに触れていない人でも飽きることなく最後まで楽しむことができると思います。グッズもとても豊富、どれも可愛くて僕も買わせていただきました!素敵な思い出を持ち帰ることができました」と感想をコメントした。Keith Haringとは何者か——彼のメッセージとは——ぜひ、会場で体感してほしい!