特別展『国宝 聖林寺十一面観音 —三輪山信仰のみほとけ』東京国立博物館で開幕—自然を崇め大切にしてきた先人からのメッセージ
国宝 十一面観音菩薩立像が東京で初公開されている特別展『国宝 聖林寺十一面観音 —三輪山信仰のみほとけ』が開催されている!どのような展覧会になっているの!?記事を読み進めよう!
昭和に定着したと考えられ、昭和世代以降の日本人が幼い頃から習慣としている食事の前の礼・挨拶「いただきます」、食事の後の礼・挨拶「ごちそうさまでした」も日本国の自然崇拝・自然信仰、神道に関係している。古来から神や先祖にお供えしたものを人もいただく、みんなでいただく神人共食という神道の風習があり、自然のものや縁起物を使ったお供え物はその土地や家々の幸せ、家族の健康などを祈って訪れる神の依り代であると同時に、神(の力)を宿すとされ、お供え物を“いただく”ということから礼・挨拶「いただきます」が生まれたと考えられている。そして、時代を経て、その神道の風習に仏教の教えが加わり、自然や生き物のいのちをいただくことへの感謝、食材や食事をつくってくれる人への感謝、一緒に食事ができる環境や家族・友人への感謝を表すようになったと考えられている。また、礼・挨拶「ごちそうさま」を漢字で表すと「御馳走様」となり、昔はいまのように簡単に食材を手に入れることができず、食材を用意するのに走り回って調達したことから、走ってまで食材を調達してくれることへの感謝から生まれたと考えられており、“御馳走様”の“馳走”は仏教では“他人の為に奔走し、功徳を施して救うこと”を意味しているという。時にこの礼・挨拶が宗教的な行為であるかどうか議論されることもあるようだが、信仰や宗教(の行為)であるかどうかの前に、ひととして、日本人として、大切にしたい、大切にすべき自然や環境、そして生かされ生きていることへの礼(儀)と習慣である。
国宝 十一面観音菩薩立像を護り伝える
現在、国宝 十一面観音菩薩立像を後世に護り伝えるプロジェクトが進行している。国宝 十一面観音菩薩立像が安置されている聖林寺の観音堂は、1959年に日本国で初めて国宝・文化財のためのコンクリートのお堂として建造されたが、いまでは老朽化が進み、自然災害にも耐えられない状況になっていることから総事業費150,000,000円をかけて大規模改修し、2022年4月末日までに新たな観音堂を完成させる計画が進行中。新たな観音堂は、耐震構造となり、国宝 十一面観音菩薩立像への免震装置も設置され、地震災害に耐える安全性が確保されるほか、参拝者が少し遠目から国宝 十一面観音菩薩立像と目を合わせて拝むことができる前室、将来的に復元を予定している光背(奈良国立博物館に寄託)を国宝 十一面観音菩薩立像に取り付けても収まる高さの半円球天蓋の高天井、参拝者が国宝 十一面観音菩薩立像を360度様々な角度から観ることができる広い空間がつくられる予定で、より多くの人々に聖林寺と国宝 十一面観音菩薩立像を参拝していただくための場所、日本国の歴史や文化、文化財を後世に護り伝える場所となる。新たな観音堂の建造には莫大な事業費が掛かるため、現在、15,000,000円を目標とするクラウドファンディング第2弾を実施し、広く一般からも支援を募っている。クラウドファンディング第1弾では、800人超の支援者から目標金額を上回る17,182,000円の支援金が集まった。
特別展『国宝 聖林寺十一面観音 —三輪山信仰のみほとけ』は、初めて奈良県から出て東京で公開されている国宝 十一面観音菩薩立像をはじめ、国宝 地蔵菩薩立像、月光菩薩立像、日光菩薩立像が約150年ぶりに同じ1つの場所に集結し、再会を果たしているほか、三輪山信仰を物語る三輪山禁足地や山ノ神遺跡からの出土品など貴重な文化財が公開され、古来から続いている自然崇拝・自然信仰に迫っている。本展では、国宝 十一面観音菩薩立像の美しさと神々しさ、国宝 地蔵菩薩立像や月光菩薩立像・日光菩薩立像の素晴らしさに圧倒されるだけでなく、日本人の祖先である大和民族が、その土地土地で自然や自然現象、環境に魂・神を感じ、畏敬の念を抱き、大切にし、神話が生まれる以前、神道と呼ばれる以前から日本国・日本人の精神(こころ)と礎を築いていたことがわかる。いま、日本国でも“持続可能な”を意味するSustainable(サステナブル)やSustainability(サステナビリティ)が叫ばれているが、信仰や宗教は置いておいても、日本人だけではなく世界中の人々が先人や先住民に思いを馳せ、先人や先住民からのメッセージを受け取り、古来から大切にしてきたこころ、自然やいのちの尊さ・素晴らしさを学び直し、言動することで、持続可能な社会・環境はそう遠くない将来に実現可能であることも確信できる。そういった意味でも本展は、先人に思いを馳せ、先人からのメッセージを受け取り、学び直す絶好の機会にもなっている。
特別展『国宝 聖林寺十一面観音 —三輪山信仰のみほとけ』は、2021年9月12日(日曜日)まで東京・東京国立博物館 本館特別5室で開催。来年2022年2月5日(土曜日)より奈良・奈良国立博物館 東新館で奈良展が開催される。
参考資料: 図録『特別展 国宝 聖林寺十一面観音 —三輪山信仰のみほとけ』(発行:読売新聞社)、広報資料、ほか
日程: 2021年6月22日(火曜日)から9月12日(日曜日)
時間: 9時30分から17時00分
休館: 月曜日(ただし、8月9日(振替休日・月曜日)は開館)
会場: 東京・東京国立博物館 本館特別5室(東京都台東区上野公園13-9)
料金: 事前予約優先制 一般 前売日時指定券 1,400円(税込)当日券(会場販売) 1,500円(税込) / 大学生 前売日時指定券 700円(税込) 当日券(会場販売) 800円(税込) / 高校生 前売日時指定券 400円(税込)当日券(会場販売) 500円(税込) / 中学生以下・未就学児 無料日時指定券 無料 / 障がい者とその介護者1名 無料日時指定券 無料、音声ガイド 有料
注意: 新型コロナウイルスによる感染症の感染拡大状況により、展覧会の内容・会期等が変更になる場合があります。変更の場合は、展覧会公式サイトで臨時お知らせします。新型コロナウイルスによる感染症の感染拡大防止のため、入館時の検温と手指の消毒、マスク着用、ソーシャルディスタンス等が必須となります。
備考: 東京展終了後、来年2022年2月5日(土曜日)から3月27日(日曜日)まで奈良・奈良国立博物館 東新館で奈良展を開催。
お問い合わせ: ハローダイヤル 050-5541-8600
会場となっている東京国立博物館 本館特別5室に入ると、目に飛び込んでくるのは、前面中央に再現された大神神社の三ツ鳥居の前に立つ国宝 十一面観音菩薩立像。内覧会では、その美しさと神々しさから、展示順をすっ飛ばし(※展示の観賞順については、会場の注意書きや係員の指示に従ってください)、まずは国宝 十一面観音菩薩立像を正面から拝し、それから360度様々な角度からじっくり拝し、今度は少し遠目の正面から目が合うように拝した。そして、展示の最初に戻り、展示順に観賞、終盤に国宝 地蔵菩薩立像、月光菩薩立像・日光菩薩立像を拝し、そしてまた国宝 十一面観音菩薩立像を拝す・・・こんな状況。笑、国宝 十一面観音菩薩立像は、ただただ見惚れてしまうくらい、いままで拝した仏像の中でも本当に美しかった。拝す価値あり!その国宝 十一面観音菩薩立像を後世に護り伝える新たな観音堂を建造するためのクラウドファンディングも実施されているので、聖林寺さんへのみなさまからの温かいご支援とご協力をお願いいたします。