過去最大規模で上陸した展覧会『バンクシー展 天才か反逆者か』が開幕—強烈なメッセージ性溢れる作品が衝撃と気付きを与える
遂に日本国でのBanksy Yearがスタート!過去最大規模で上陸した『バンクシー展 天才か反逆者か』の全貌と見どころはいかに!?プロデューサー兼キュレーターが語ったこととは!?記事を読み進めよう!

Girl with Balloon

Art by Banksy ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
この『Girl with Balloon』(『ガール・ウィズ・バルーン』)は、もっとも有名な代表作であり、イギリス人の約70%がバンクシーの作品であると認識・認知し、人気を博している。初めてイギリス(連合王国)ロンドンのストリートの壁に描かれた後、誰かによって「There is always hope」(いつだって希望はある)という言葉が書き加えられたそうだ。ロンドンのストリートの壁以外の場所にも描かれているほか、2004年には販売用の版画が制作されている。2014年には世界的な人権保護団体などが中心になって始めたキャンペーン#WithSyria(シリアと共に)に参加し、ストリートに『Girl with Balloon』(『ガール・ウィズ・バルーン』)の画像を投影、オフィシャルウェブサイトでメッセージを発表したことがきっかけとなり、世界中のセレブリティをはじめ多くの一般の賛同者が自身のソーシャルメディアに赤い風船を持った写真を投稿した。絵の見方や感じ方は人それぞれで、様々な解釈がなされており、少女がバルーンを手放してしまい飛んで行った、あるいは、少女が飛んでいるバルーンに手を伸ばしていると考える人もいる。飛んでいる風船に喪失感を感じる人や自由を感じる人もいる。バンクシーは、人が生まれながらに持っている子ども時代の純粋さを少女で表現したと考えられる。2018年には、サザビーズ・オークションハウスで開催されたオークションで『Girl with Balloon』(『ガール・ウィズ・バルーン』)が約150,000,000円で落札・売却された直後に額縁に仕込んだシュレッダーで作品の半分を細断し、“愛はゴミ箱の中に”を意味する『Love is in the Bin』(『ラブ・イズ・ザ・ビン』)を誕生させた。
Dismaland

Art by Banksy ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
バンクシーは、度々ディズニーを引用した作品を制作し、法的紛争にも発展している。2015年には、イングランドのウェストン=スーパー=メアーに夢の国を引用したBemusement Park(混乱を呼ぶテーマパーク)『Dismaland』(『ディズマランド』)を多くのアーティストと一緒に創り上げ、期間限定で開催した。ディズマランドとは、Dismal(憂鬱な、陰気な)とLand(世界)を組み合わせた造語で、焼け焦げたお城や横転したカボチャの馬車に乗っていたシンデレラの死体とそれに群がるパパラッチ、防護服に身を包んだ人が乗っているメリーゴーランドなどが展示された。本展覧会では、インスタレーションとして、ポスターや写真、実際に掲載されたイングランドの新聞『The Weston & Somerset Mercury』(『ザ・ウェストン&サマセット・マーキュリー』)が展示されているほか、スクリーンではディズマランドの様子を収録した映像が公開されている。
The Walled Off Hotel

Art by Banksy ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi

Art by Banksy ©︎ SAPIENS TODAY and Wingedicate, Photo by Ryohei Ryan Ebuchi
2017年3月、バンクシーは、イスラエルとパレスチナを分断する分離壁に近いパレスチナ自治区内検問所の隣にホテル『The Walled Off Hotel』(『ザ・ウォールド・オフ・ホテル』)をオープン。“壁で分断されたホテル”を意味するホテルの名前は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨークにあるお洒落な高級ホテルWaldorf Astoria(ウォルドルフ・アストリア)の名前を皮肉って付けられた。ホテルの館内は、バンクシーと複数のアーティストがデザインした実際に宿泊できる客室10室のほか、ギャラリー、バー、ショップ、パレスチナとイスラエルの紛争・問題の歴史を辿るMuseum of the Wall(壁の博物館)が併設され、バンクシーの作品20点以上とパレスチナ人アーティストの作品も複数展示されている。動物の角や剥製の替わりにCCTVカメラとガスマスクが飾られるなど、バンクシーらしい内装となっている。
バンクシーの本物の作品が世界中から集結した。作品を見ていると、どストレートに様々なことを問いかけられ、世界と社会のリアルな現状が見えてくる。いまこの時代だからこそ、日本人も日本国と世界の問題に目を向け、もっと考えなければならない。