国立科学博物館が新種の角竜をフルカトケラトプス・エルキダンスと命名・記載—研究結果を特別展「恐竜博2023」にて展示
特別展「恐竜博2023」でこれまで「ケラトプス科の未記載種」として展示されていた角竜の化石標本が、ついに新属新種として命名・記載された!記事を読み進めよう!
東京・国立科学博物館は、特別展「恐竜博2023」でこれまで「ケラトプス科の未記載種」として展示していた角竜の化石標本(標本番号:NSM PV 24660)を新属新種として「Furcatoceratops elucidans(フルカトケラトプス・エルキダンス)」と命名・記載したことを発表した。
国立科学博物館は、これまでの同化石標本の研究から、トリケラトプスなどに代表される植物食恐竜のなかまでジュラ紀から白亜紀の北半球で繁栄した角竜の新種であることや、推定年齢3歳未満の若い個体(亜成体)であることを割り出したほか、19世紀に角竜の化石が世界で初めて発見・報告された地層として知られているアメリカ合衆国モンタナ州・ジュディスリバー層(後期白亜紀)の恐竜の多様性を解明するうえで重要な化石標本で、角竜の骨の形態を詳細に調べられる重要な化石標本であるという研究結果を発表し、オランダ現地時間2023年8月11日(金曜日)、白亜紀と古第三紀の境界を扱ったトピックに焦点を当てる科学ジャーナル誌『Cretaceous Research』(『クリィテェィシャス・リサーチ』)で論文『Furcatoceratops elucidans, a new centrosaurine (Ornithischia: Ceratopsidae) from the upper Campanian Judith River Formation, Montana, USA.』(著者:石川弘樹/對比地孝亘/真鍋真)が公開された。同化石標本には角や吻部に既知の種とは異なる固有の特徴が認められ、新属新種としての記載に至った。
同化石標本がジュディスリバー層産の角竜に関する分類学的・解剖学的な理解を進める可能性を持っていることから、今後、国立科学博物館は国内外の恐竜研究者と協力し、近縁種との比較をさらに進め、ジュディスリバー層の恐竜の多様性とその変遷、マイクロCTスキャンなども活用して、クチバシや顎、三半規管などの内部構造や神経血管系などの特徴に関しても研究を進めていくという。また、発掘地でも追加の調査が予定され、同じ場所から発見された角竜以外の化石についても研究を進めているようだ。
同化石標本は、2012年にジュディスリバー層で発見され、例外的に完全度が高く保存状態の良い角竜の化石標本。国立科学博物館が2018年に入手し、これまで研究を進めてきた。同化石標本とその研究結果を「ケラトプス科の未記載種」として特別展「恐竜博2023」に展示し、話題に。現在、同化石標本は大阪・大阪市立自然史博物館 ネイチャーホールにて開催されている特別展「恐竜博2023」(大阪会場)で展示されている。
Furcatoceratops elucidans|フルカトケラトプス・エルキダンス
番号: NSM PV 24660
分類: 鳥盤類 新鳥盤類 周飾頭類 角竜類 ケラトプス科
学名: Furcatoceratops elucidans(フルカトケラトプス・エルキダンス)
属名の意味: フォーク状の角のある顔(目の上の角が二股フォークのように伸びていることから)
種小名の意味: 光を当てるもの(研究例の乏しい骨の形態をも明らかにする標本であることから)
産地: アメリカ合衆国モンタナ州 ウィニフレッド近郊
地層: ジュディスリバー層 コールリッジ部層
時代: 後期白亜紀 カンパニアン(今から約7560万年前)
全長: 約3.5m(亜成体)
フルカトケラトプス・エルキダンスの化石は、特別展「恐竜博2023」の目玉として展示されているズール・クルリヴァスタトル(アンキロサウルス類)の全身実物化石も発掘されたジュディスリバー層で発見。同じ層では、角竜のメルクリケラトプスやスピクリペウス、肉食恐竜ダスプレトサウルス・ウィルソニといった多数の新種も発見されている。後期白亜紀には、いま見つかっている恐竜以外にもたくさんの属種の恐竜が闊歩していたと考えられており、多様性に溢れた太古の地球はどんなに素晴らしかったか——想像するだけでもワクワクする。国立科学博物館による今後の研究にも注目したい!